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コラム21 <Dr.Jhonson‘s House(サミュエル・ジョンソンの家)を訪ねる 代表理事 板倉正子
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 サミュエル・ジョンソン(Samuel Johnson, 1709年〜1784年)は『英語辞典』“A Dictionary of the English Language”(1755年)の編者として知られている。日本でいうとさしずめ、広辞苑の新村出や国語辞典の金田一春彦といったところであろうか。彼はまた文学者であり詩人であり、文献学者でもあった。彼の英語辞典には、単語の定義だけでなく多くの引用文が収録されている事でも有名である。
 また彼は、沢山の名言・警句を残しており、その中には、「腐敗した社会には、多くの法律がある」とか「怠け者だったら、友達を作れ、友達が無ければ、怠けるな」等がある。特に「ロンドンに飽きたものは人生に飽きた者だ。ロンドンには人生が与え得る物すべてがあるから」“When a man is tired of London, he is tired of life; for there is in London all that life can afford.” という言葉は特に有名である。
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 Dr.Jhonson‘s House はロンドンの地下鉄Central線のChancery Lane駅から歩いて5分ほどのところにある。 家は道路に面しているのではなく、小さな広場(Square)を囲むように立っている民家の一角にあり、おそらく、その小さな広場は昔は馬車や馬を停めるところだったのだろう。
 4階建て地下一階のこじんまりした建物で、サミュエル・ジョンソンが、1748年〜1759年迄を過ごしたとされている。その後彼はいくつかの家に住んだといわれているが、どの場所であったかは、現在では、はっきりは分からないそうである。
 彼はこの家で、上記の辞書の編纂をしたと言われているが、この場所は、印刷所に近いという点で、辞書作りに便利であったということである。
 
 現在この家は、Cecil-Emilie Harmsworth夫妻により設立された財団によって修復され、ジョンソン博士が居住した当時の様相を再現され、一般に公開されている。現在は2名の職員と数名のボランティアで運営されているそうである。
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 玄関を入ったところは、受付と小さなショップになっており、ジョンソンゆかりの絵葉書やバッグなどが売られている。2階から4階までは各二間ずつ部屋があり、関連の写真や調度が置かれている。その静かなたたずまいは、18世紀イギリスに生きた知識人としてのサミュエル・ジョンソンの暮らしぶりを彷彿とさせ、便利な電子機器に侵されている現代の生活からタイムスリップしたような気分を味わわせてくれた。
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 私がサミュエル・ジョンソンに興味を持ったのは、何年か前、某大学図書館からの依頼で、前出の『英語辞典』を修復したことにある。その後、「舟を編む」という、辞書作りをテーマにした映画(原作:三浦しおん)を見たことで、書籍というものの中での特に辞書という存在に興味を引かれたからである。近年、IT化が進み、電子辞書の便利さが世の中にもてはやされるようになったが、かえって紙の辞書との違いを明確に感じることが多くなった。

 辞書論はさておくとして、書棚の中には、丁度私たちが何年か前に修復した辞書と同じ版の物も収められており、興味深く見ることが出来た。
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 “Language is the dress of thought” <言葉は思考の衣装である>とはサミュエル・ジョンソンの言葉である。思考は言葉になったとき、初めて形造られるのではないか、と私は思っているので、自分の考えを言い表す時、適切な語彙で文章を構築する作業に、辞書は欠かせない存在である。言葉の上澄みだけを羅列するような現代の国語社会にあって、思考の海を渡る船は紙の辞書でなくてはならない、と感じるのは、時代に逆行しているのだろうか?
 視覚や映像が主流になりつつある今日、言葉によって思考を構築する作業の重要性を再認識させてくれた、Dr.Jhonson‘s Houseであった。
               (2014年1月22日)
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