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コラム18 <コペルト装本 〜覆い被さるものと発見されるもの  卒業生  田川 とも子 
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 書物という主題は西洋美術史のなかで知識とその虚しさの象徴としてよく描かれる。
 昨日、製本講座でコペルト装()なる9世紀から16世紀の製本を習った。固い芯を入れずに柔らかな革などで封筒のように本体をくるむ簡易製本である。持ち運んでも小口が開いたり汚れたりする心配がなく軽いため、携帯の形態としては利にかなっていると感心。実習なので実際に紙丁を折り、糸で綴じ、表紙革を穿孔し、合体させ…というアナログな工程を経るのだが、綴じなどの反復作業の途中にいつも私は心ここにあらずになる。で、昨日も糸の掛け方を実は盛大に間違えていたのだが、気づいたときには全丁綴じ終わった後だった。
 針を動かしながら考えていたことは詮無いことである。ヴァニタス画(虚栄画、※※)などにおいて書物は、どんなに知識で賢しくなっても人はみな死ぬという虚しさとその諦観を示すと一般的に言われているが、叡智をたたえた書物が人間にひもとかれぬまま放置される虚しさや、かつてはこんなに手間のかかった書物が消耗品として消費される虚しさなど、他の種類の虚しさもあるのではないか…などと思っていたのだ。
 不格好ながらそれでも、半日がかりで一冊のコペルト装もどきができた。ブックカバーと表紙を兼ねるしなやかな革の覆い。その有り様は肝心の内臓を守る皮膚にも重なる。中身の紙と外装の革がきっちりコードで繋がれて結ばれていて、なんだか頼もしい。表紙を解く、つまり、覆いを取ること、それは文字通りのdis-coverである。書籍は、げに官能的で悦ばしい。


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Kopert :ドイツ語表記だがcoveredくらいのニュアンスである。もともとラテン語のcooperire(覆いかぶせる)からで、つまりイタリア語のcoperta(毛布)と同源だろう。コペルトと聞いた瞬間に、即座にイタリアの料理店のテーブルチャージやそこに含まれているパン(日本でいうお通し、突き出しのようなもの)を連想したが、これも料金に含まれて(くるまれて)いる、という意味では繋がっているのかもしれない。


※※ヴァニタス画: 17世紀オランダあたりでよく描かれた静物画。「死を忘れるな」という寓意を孕んで、髑髏や書物、時計、楽器、熟した果実、燃え尽きた蝋燭などのモチーフが組み合わせられる。




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